手錠のままの二人
あらすじ
黒人男性カレンと白人男性ジャクソンが手錠で繋がれた状態で警官に搬送されている二人。 搬送中、囚人護送車が事故に遭い二人は逃走に成功する。 白人と黒人ということもありお互いぶつかりながらも、半ば強制的に協力せざるを得ない環境で逃避行を始める。
逃避行の中お互いの過去について語りあい、お互いを信頼しあうようになっていく。
映画のネタバレ・感想
「手錠の二人」パターンの基礎となっている映画。
古い白黒映画ということもあり、テンポは微妙だが人間の描き方がうまく十分楽しめる。
この手錠で繋がる二人という構造は「ミッドナイト・ラン」に受け継がれていく。
追いかける側の警察の描写がどこからユーモアがあり、「犯人なんかどうでもいい!犬の方が大切だ!!」といいだす警察犬の管理人も出る始末。
途中に盗みに入った集落での謎のリンチ間際イベントで助けてくれる元脱獄犯、夫に出て行かれた子供一人、母親一人家族でのアバンチュールイベントなどあり。
最初の集落イベントは正直意味がわからなかった...(あれ必要かな?なぜ元脱獄犯優しい?)
シングルマザーイベントは意外性があってよかった。 母親が尻軽な上に、ずる賢いキャラクターが非常によかった。
主人公達の仲を引き裂き、再び絆を強める良いトリガーとなっている。
ストーリーやテーマについて
上映当時のアメリカ黒人差別社会からすると非常にテーマ性の強い、尖った映画だと思った。 今でもそのメッセージ性は失われていない。
黒人男性カレンは囚人だが、そもそも不平等な社会によって生まれた犯罪者として描かれている。 カレンは耐えることでしか生きられない時代に、牙をむき犯罪者になってしまった。
ジャクソンも白人だが移民という立場で、他人の車の整備作業などやらされ社会に不満を抱きながら、遠い夢も見ている人物として描かれている。
お互いの不遇な境遇を愚痴りながら、時々お互いをディスり合う会話とテンポが軽快で飽きさせない。
心に残ったセリフ・キャラクター
カレン
手錠が解除された状態で
「手錠で繋がってるだろ?」
と疲れ果てたジャクソンを立ち上がらせるシーンがカッコ良かった。
ビリーの母
名前は映画の中で明記されていない。
彼女は一人息子が連れてきた囚人と思しき二人組を、恐るどころか何くわぬ顔で手厚く対応する。
彼女はジャクソンに一目惚れし、ジャクソンもその気になるという急展開を見せる。
彼女の動機として、旦那に見限られた上に子供の面倒を見なくてはいけない日常から、早く抜け出したい!という衝動が突き動かしていた。(序盤の展開は疑問に思ったが本心を吐いたセリフが生々しかった。子供も親戚にあづけるという始末)
彼女はジョンソンと一緒に確実に逃げるために、カレンに間違った道順を教え、確実に死に近づけるようにする。
捕まることで自分たちのことがバレることを恐れたからだ。
なんというずる賢さ!!
ジョンソンを手厚く看病した姿の裏にこんな一面を表現させるなんて...! (現代の映画でもこの展開はできないんじゃないかな。)
物語のパターン
手錠の二人パターン
ある条件によって強制的に対照的なキャラが共存する(しなければいけない)パターン。
黒人と白人という(当時は)強烈な対称性がある。
まとめ
確かに演出面を見ると現在の映画に比べテンポが悪いが、そのセリフや人物の描き方は現代のドラマと引けを取らない意外性と生々しさを備えている。
動画配信はされていないのでDVDレンタルして一度は見るべし。